講師インタビュー「武谷先生」

今回は武谷先生にインタビューをお願いしました。武谷先生はブルース、ブルーグラス等の特別コースも担当されています。特にブルースやカントリーに深い知識と経験をお持ちの先生です。今回はそういった特殊コースのレッスンについて詳しく話を聞いていきたいと思います。では、よろしくお願いします。

RGS:まず、簡単に自己紹介をお願いします。

武谷先生:RGSギター講師の武谷健です。エレキ・ギター、アコースティック・コースの他、ブルース・コース、ブルーグラス・コースを担当しています。ギタリストとして個人ではブルーグラスの弾き語り、バンドではカントリーバンド等を主として活動していますが、ブルースやロックも演奏しています。よろしくお願いします。

RGS:幅広く活動されていますね。多ジャンルに渡って演奏をするのは、沢山の知識や経験が必要なのですごいですね。中でも「ブルーグラス」という音楽ジャンルは耳慣れないですね。先生はブルーグラス・コースも担当されていますが、どういった音楽なのでしょうか?簡単に教えてもらえますか。

武谷先生:ブルーグラスはカントリーのサブジャンルととらえられる場合もありますから、全体の雰囲気はカントリー系の音楽と似ています。使われる楽器はアコースティックな”弦楽器”です。アコギ、マンドリン、バンジョー、フィドル(バイオリン)、ウッドベース、が基本的な編成です。これらの楽器でやる音楽を「ブルーグラス」と呼ぶと考えても良いくらいです。

RGS:なるほど。カントリーの中で、弦楽での演奏が基本になったジャンルなんですね。ギター好きには特に興味深いジャンルですね。皆さんも是非聞いて見て下さい。しかし、ブルーグラスというジャンルは一部の詳しい人にしか知られていないイメージですが、なぜでしょうか?

武谷先生:実はブルーグラスという音楽は、本場アメリカでもローカルなもので、現在のカントリー・ミュージックのようにメイン・ストリームにあるような音楽にはなりませんでした。ブルーグラスという音楽には、もともとローカルな場で楽しむという機能が内蔵されていて、あまり外に開いた音楽性ではないのです。ブルーグラスは、”演奏者のための音楽”という性格が強く、ジャムをして楽しむスタイルが基本です。演奏しているプレイヤーはめちゃくちゃ楽しいのですが、なかなか広まらないのはそういった理由もあります。

RGS:演奏者の為の音楽と言うのは、一般的な広がりに繋がりにくいですかね。

武谷先生:他にもいろいろありますが、長くなるのでここでは言い切れません…。逆に広まっていないからこそ、その中核的なイズムが濃密に引き継がれているという面もあります。ブルーグラスの良さを感じられる人は、圧倒的にブルーグラスに”はまり”ます。個人的には、そういった求心力の根本は、この”イズム”に対しての共鳴にあると思っています。このイズムが濃密でぶれないからこそ、そこに共鳴する人同士は非常に大きな共感のもとにつながることができるのです。そこがブルーグラス・コミュニティの素晴らしいところです。

RGS:元々閉鎖的な音楽であるがゆえに一般的には広がらず、それゆえに濃い、と言う感じでしょうか。おそらく、同じようにブルーグラスに共鳴している人には「そう!まさにそれ!」と言った感じになるのでしょうね。色々な世界がありますね。私も勉強になります。ブルーグラスのレッスンに関してはどうでしょう。独特なテクニックとか使うのですか?

武谷先生:ブルーグラスギターは、別名フラットピッキングギターといって、ピックを使ってアコギを弾く奏法のことを言います。フラットピッキングギターはフィンガーピッキングをほとんど使わず、あらゆることをピッキングで行うのが特徴です。レッスンではピッキング・テクニックをまず重点的に練習しますね。

ピックを使ったブルーグラスのピッキングテクニックは、指では表現できないクリアで流麗なサウンドが魅力です。開放弦を巧みに使ったフレージングや、クロスピッキングと呼ばれる高速アルペジオ奏法など、他のジャンルとは発想の違う独特なテクニックがたくさんあります。基本的なテクニックの練習と並行して、ピッキングの面白さを追求できるようにレッスンを進めていきます。

RGS:ピッキングはどんなギターを弾くにも最も基本で最も難しいですよね。ピッキングがギターの表現力の殆どであるとも思いますし、ブルーグラスには特化したピッキングが多くあるのですね。ではもう一つの特殊コースであるブルースについてもお話を伺いましょう。私は、ブルースというのは幅広いジャンルの総称のように感じています。様々なブルースがあると思いますが、レッスンでは具体的にどのようなブルースを取り上げるのでしょうか?アコースティック・ブルース?テキサス・ブルース?シカゴ・ブルース?リズム&ブルース?等

武谷先生:ブルースコースのレッスンは、まずアコギとエレキに分かれます。アコギに関しては基本的にはカントリー・ブルースです。ロバートジョンソンに代表される、指弾きのブルース・ギターです。戦前のブルース・ギタリストを取り上げることが多いです。カントリー・ブルースはギター1本で完結するスタイルですので、一人でも楽しめます。
エレキに関しては、ブルースと名の付くジャンルはすべて取り扱っています。ブルースは人気があるので、サブ・ジャンルが多すぎて混乱しますが、テキサス・ブルースもシカゴ・ブルースもエレキで弾くブルースという点では同じです。ブルースと名の付くジャンルである限り全く違うマナーで成り立っているわけではないです。やはり、エレキのブルースにはブルースをブルースたらしめる”基本”がありますから、その基本を踏まえながら、あとは生徒さんの好みに沿って曲を決めてレッスンをしています。

RGS:ブルースひとつを取り上げても多ジャンルなのですね。先生はかなり多くのジャンルに精通しているので、自分では聴かない違ったブルースの曲を教わったり、各ジャンルの違いを詳しく聞いたり、新しい発見をもたらしてくれそうですね。ギターはブルースの発展と共に成長してきた楽器ではあると思いますが、ブルースに特化したギターというのはあるのでしょうか?

武谷先生:ブルースに特化したギターはありません。何でもいいと思います。ブルースはギターの音色や、テクニックなどたくさんポイントはありますが、結局はブルース”魂”が大事ですから。ブルースの場合はブルース”魂”をどこまで練り上げられるかにかかってますから。

RGS:むむっ。魂で奏でる音楽ですね。

武谷先生:そうです(笑)。とはいえ、なんとなく定番も知りたいと思いますので、言っておきます。アコギはギブソン系が多いです。いなたい音がするので、人気ですが、ギブソン以外のギターでも全く問題ありません。エリッククラプトンはマーチンを使っていますし、好きなギターでOKです。エレキは、ブルースギターということで言うと、あんまり偏りはない気がします。ギブソン系、フェンダー系両方います。テレキャスもストラトもレスポールもセミアコも、ブルース”魂”さえあればなんだってマッチします。好きな形のギターを選べばよいと思います。

RGS:結局、使用するギターは何でも良いという事ですね。ジャンルによっては速弾きに特化したギターや、ジャズに特化したギター等がありますが、ブルースは弾く人の魂がこもっていれば竿は選ばないという事ですね。魂の籠った演奏を目指してもらいたいです。カントリーやブルースに興味を持っている人も多いと思うのですが、これから始めたいと思っている人にアドバイスをお願いします。

武谷先生:カントリーもブルースも「ギター・ミュージック」と言っても過言ではないですから、ギターが大活躍します。アコギでもエレキでも、ギターが好きでやってみたい方は、だれでもウェルカムです。カントリーやブルースをやる事で、今まで全然気づいていなかったギターの奥深い世界に触れることができます。ロックとはまた違った独特の世界です。一度はまったら病みつきになること間違いなしです!
現に、私個人がカントリーやブルースを愛していて、カントリーやブルースに出会って人生が変わっちゃったくらい、ものすごく”好き”なんです。メイン・ストリームではない、こういったジャンルをやる場合は、この”好き”の気持ちが超大事です。ちょっとでも気になる気持ちがある方は、絶対才能があるでしょう。私は、この”好き”の気持ちを皆さんと共有して、一緒に楽しみたいと思っています。是非、レッスンに来てください!

RGS:熱い気持ちが伝わってくるコメントありがとうございます!好きの気持ちは大事ですね。少しでも興味があったり、気になる方は是非、武谷先生の熱い心をレッスンで共有しましょう。レッスンで気を付けている点や意識している点などあったら教えてください。

武谷先生:レッスンは対人間ですから、生徒さんも講師も一緒に楽しみながら、共にレッスンを作っていくという感覚をもって取り組んでします。色んな方がいらっしゃいますから、コミュニケーションを大事に、個々の体格や性格に合わせたレッスンを心がけています。皆さんとの出会い、会話を楽しみにしていますし、こちらもいろいろと学ぶことも多いですから、そういう意味でもレッスンは楽しいですね。

テクニックに関しては、身体の動きをかなり細分化して捉えていて、それを言語化する努力をしていますから、どこよりもわかりやすいレッスンは出来ていると思っています。ですが、レッスンはそのような情報提供の場のみではなく、コミュニケーションの場としても機能させなくてはならないと思っています。なぜなら、指の動かし方や力の入れ方というのは、本当に個人差があって、そういうものはレッスンで実際に見て、話して、というコミュニケーションの中で見えてくるものだと思っています。実際に対面でレッスンをするメリットは、そういったところで、テキストや動画では学べない、”個人にあった”本質的な学びが得られると思います。生徒さんと会話する中で、その人にあったもの、本当にその人が求めているものが出てくるものだと思っています。それってかなり共同作業なんです。ですから、生徒さんとは色々会話しながら、いろんなものを共有していきたいと思っています。


RGS:先生と生徒さんとで作る共同作業ですね。先生が生徒さんとのコミュニケーションを大事にされている様子は普段のレッスン風景からも感じ取れますね。色々コアな音楽の話をもっと沢山聞きたい所ですが、お時間の都合もありますので、また次の機会に各ジャンルの詳しいお話をお願いします。

武谷健先生でした。ありがとうございました。先生の深い知識と音楽に対する熱い想いを伺うことができましたね。今回は大まかにブルースとブルーグラスに付いて伺いましたが、また別のジャンルに関してや、更に深堀りしたお話も伺えればと思います。では次の機会をお楽しみに。

アールジーエス ギタースクール