ペダルスチールギター

ペダル・スチール

ペダル・スチール・ギターという楽器を紹介しましょう。日本では見ることの少ない楽器ですが、カントリー・ミュージックには必須のギターです。演奏をするのはとても難しい楽器ですが、その表現力は唯一無二であり、存在感も非常に大きく、楽曲の雰囲気を一発で変えてしまうほどです。ペダルスチールを見てみましょう。

ペダルスチール(Pedal Steel Guitar)
「ペダルスチール」はスチールギターの仲間です。スチールギターには大きく分けて2種類のギターがあり「ラップ・スチール・ギター(Lap Steel Guitar)」と「ペダル・スチール・ギター」と呼ばれています。ラップ・スチールはその名の通り、膝において座って演奏する楽器ですが、スタンドが付いており、膝に置かないで弾く事もできるコンソール・タイプのものもあります。スタンドを延ばせば立って弾く事もできます。ラップ・スチールはボディーに弦が張られているだけのシンプルな構造をしています。ペダルの付いていないスチール・ギター(non pedal steel guitar)をラップ・スチールと呼んでしまっていいでしょう。
ペダル・スチールは、スチール・ギターに、チェンジャーと呼ばれるブリッジを搭載し、ペダルやニー・レバーによって個別の弦の音程を変化させることができます。バーで弦を押さえて、ピックで弦をはじき、ペダルを踏んで、膝でレバーを操作しながら弾きます。楽器の構造上、スタンドを延ばすことはできず、座って弾きます。下の写真のように異なるチューニングのネックが2連で並んだダブル・ネックが基本で、各ネックには10本の弦が張られています。1つのネックだけのシングル・ネックや、8弦、12弦、14弦のものもありますが、現在のところ最も流通しているのはおそらく10弦のダブル・ネックでしょう。

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▲ペダルスチール。これは10弦のダブル・ネックです。

ペダルの役割
ペダルを踏むと特定の弦の音程が変化します。ある弦の音程が半音上がったり、1音上がったりします。音を聞く限りでは、ギターのチョーキングを行なったようになります。ペダルと音程の変化する弦の配置は決められており、自分で自由に変える事はできません。ペダル・スチールは、楽器ごとにチューニングが決められており、それに合わせたペダルが配置されています。変化する音程も決められています。ペダルの操作は主に左足で行ない、同時に2つのペダルを踏んだりもしています。

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▲ペダルが付いています。
▲裏から見たところ。ペダルにロッドがついており、ロッドをペダルで引張ることでチェンジャーを操作している。

ニーレバーの役割
ニー・レバーは、文字通り膝で操作するレバーです。膝を左右に振り動かすことで操作ができるようになっています。楽器のグレードによって、1本~7本くらいレバーが取り付けられています。ニー・レバーもペダルと同様に、特定の弦の音程を変化させる事ができます。レバーの操作できる弦、音程が決められているのもペダルと同じで、自分で変更することはできません。レバーは左右についており、両足で操作することになります。ペダルと同時にレバーを操作することも多く、ペダル操作以上に複雑な要素を持っていると言えるものでもあります。

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▲本体からレバーがぶら下がってます。
▲レバーにもロッドがつながっており、これを操作することでチェンジャーを動かしている。

チェンジャー
ペダル・スチールの大きな特徴は、上記したようにペダルやレバーの操作で個別の音程を変化させることができるということです。この、弦個別の変化を可能にしているのが、ブリッジにあるチェンジャーと呼ばれる可変式のコマにあります。ペダルやレバーでこのチェンジャーを動かすことで弦の音程をコントロールしているのです。チェンジャーには、音程を変化させる仕組みによって、いくつかの種類に分けられています。現在最も多く使われているであろう方式は「ALLPULL」と呼ばれる構造のチェンジャーで、そのほかにも「PULL/Release」や「Push/Pull」等あり、チェンジャーの種類によってチューニングの安定度なども変わってきます。

▲Push/Pullのチェンジャー。弦の乗ったコマが稼動します。
▲チェンジャーを裏から見たところ。ロッドやスプリングによって稼動させてます。
▲AllPullのチェンジャー

ボリューム・ペダル
ペダル・スチールの演奏ではボリューム・ペダルを必ず使います。楽器と一体型になっているボリューム・ペダルもありますが、多くは汎用品のペダルをセットして使います。ボリューム・ペダルは右足で操作します。音量のコントロールを行い、ペダル・スチール独特なボリューム奏法をするのに必須のアイテムになります。ラップ・スチールでもボリューム・ペダルを使うことがありますが、ギター本体にボリューム・ポットがついているので、必須ではありません。ラップ・スチールは手元の摘みでコントロールができますので、ボリューム・ペダルを使わなくてもいいということです。ペダル・スチールは、ボリューム・ペダルを使うことが前提に作られているので、本体にボリュームが付いていないものが多いです。通常のギターで使われるボリューム・ペダルを使用することも出来ますが、ジャックの差込口の構造や、操作性の違いがあるので、スチールギター専用のペダルを使うことが基本になります。

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▲ボリューム・ペダルは右足で操作します。

バーとピック
ペダル・スチールはスチール・ギターの仲間なので、左手にバー、右手にフィンガー・ピック、サム・ピックを付けて演奏します。この辺りはラップ・スチールと同じです。ペダル操作によって弦の音程を変える事ができるので、ラップ・スチール程はバーの動きが多くありません。スラントやリバース・ポジションにすることもあまり無いのが特徴です。

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▲バーと3本のピックで弾きます。


ペダル・スチールで使われる弦は通常のエレキと同様に、スチール弦のプレーン弦とワインド弦です。10弦が基本です。8弦のペダル・スチールを見ることがありますが、スタンダードなスタイルは10弦です。シングル・ネックとダブル・ネックの2種類があります。ペダルの数が収まらなくなってしまうので、コンソールタイプのラップ・スチールのようにトリプル・ネックはありません。10弦と聞くとかなり難解なイメージを抱くかもしれませんが、まさにその通りで、かなり難解です。弦の多さに慣れるだけでも、そこそこの練習が必要でしょう。ダブルネックのギターは重量が重く、持ち運ぶのは非常に困難です。そこで、2本のネックをあわせ持つ形のユニバーサル・チューニングが考案され、コレをシングルネックに収めたタイプのギターもあります。ユニバーサル・チューニングでは12弦を基本とし、14弦のタイプのネックもあります。

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▲ペダルスチールは10弦が基本です。

チューニング
前述したように、ペダル・スチールのチューニングは楽器の構造により決まっています。カントリー・ミュージック等で最も良く使われているのがE9thチューニングです。カントリー・ウエスタンやJAZZで多く使われるのがC6thチューニング。ダブル・ネックのギターでは、手前にC6、奥にE9がセットされています。この2つのチューニングをあわせ持ち、シングル・ネックに収めた「ユニバーサル・チューニング」もあります。具体的なチューニングの仕方は「ペダル・スチールのチューニング」に詳しく書いておりますので、こちらを参考にして下さい。

ピックアップ
ペダル・スチールはエレクトリック・ギターです。ラップ・スチールにはアコースティック仕様のものもありますが、ペダル・スチールにはエレキ仕様のものしかありません。ということで、ピックアップが搭載されています。伸びのよいサスティンが特徴なので、比較的ハイパワーなものが搭載されていることが多いです。ラップ・スチールには2ピックアップ使用の機種も多くありますが、ペダル・スチールは1つのネックに1つのピックアップが基本セットとして搭載されています。2つ以上のピックアップを載せるカスタマイズされたものもあります。

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▲ハムバッキングのハイパワーなピックアップが搭載されてます。

アンプ
エレキ仕様のペダル・スチールには、もちろんアンプも必要になります。ペダル・スチールは基本的にはクリーン・トーンでプレイします。ハイ・パワーなピックアップにおいても、クリーンで伸びのあるトーンが必要になります。従って、アンプは要領の大きいアンプを使います。ペダル・スチール専用のアンプは200Wくらいのものが多いです。ロック・ギターではアンプのオーバードライブを利用しますので、50W〜100Wクラスのものが多く使われますが、歪を嫌うペダル・スチールでは大きな要領のアンプが好まれます。

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▲ペダル・スチール用のアンプ。PEAVEY「NASHVILLE 112」中域の芯がしっかりしており、抜けが良いクリーントーンが特徴。

エフェクター
通常のエレキ・ギター同様にペダル・スチールでもエフェクターが使われています。特にリバーブやディレイ等の空間系は必須で、サウンドに欠かせないものになっています。ペダル・スチール用のエフェクターもあります。下の写真のように・スチールギターの足に取り付けて、手元で操作しやすい専用のエフェクターもあります。

▲足に取り付けができるGoodrichのペダルスチール専用バッファー

フレーズの特徴
ペダル・スチールのフレーズの特徴は、ペダル操作による音程変化を利用したものになります。ペダル操作による音程変化は、先にも述べたようにギターのチョーキングと同じような音になります。単弦でペダルを操作すると、まさにチョーキングと同じになります。しかし、ペダル・スチールでは、複音を鳴らしながら片方の弦だけを音程変化させたり、1本を半音、1本を1音と音程を変えることもできます。このようなペダル操作を使ったフレーズは、通常のエレキ・ギターはもちろん、ラップ・スチールでも鳴らすことはできません。この他にも、バーによるスライド・プレイや、ボリューム・ペダルによる奏法等、特徴的なフレーズが沢山あります。詳しくは各ページに記載していきます。

ペダル・スチールについて見てみました。少しでも興味を持っていただけたらと思います。

金髪センセー

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