ブルーグラス・ミュージックの誕生

ブルーグラス・ミュージックの誕生
ブルーグラスは、カントリーのサブ・ジャンルとして捉えられることもありますが、実は、ブルーグラスもカントリーもほぼ同時期(1940年代)に誕生しており、共にマウンテン・ミュージックを祖とする音楽です。起源が同じなので、2つのジャンルは雰囲気が似ており混同されがちですが、ブルーグラスはカントリー・ミュージックから派生したものではなく、マウンテン・ミュージックを原点とした1つの独立した音楽ジャンルとして捉えるのが正しい認識です。今回は、ブルーグラスを1つの独立した音楽ジャンルとして捉え、マウンテン・ミュージックの起源から、ブルーグラス・ミュージックの誕生までの歴史を見ていきましょう。

「ブルーグラス」の意味
ブルーグラスとはイネ科の植物で、別名ケンタッキー・ブルーグラスと呼ばれ、日本名はナガハグサと言います。また、ブルーグラスは、その草がよく生えているケンタッキー州 の別名(愛称)としても知られています。ブルーグラスが音楽のジャンル名となったのは、ケンタッキー州出身のビル・モンローが故郷にちなんでつけた、BILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYSのバンド名に由来しています。

ナガハグサ(ケンタッキー・ブルーグラス)

マウンテン・ミュージック(オールドタイム・ミュージック)の誕生
ブルーグラスの原点である「マウンテン・ミュージック(オールドタイム・ミュージック)」の起源は、17~18世紀のヨーロッパからアメリカへの移民の時代に遡ります。移民の中でも、スコットランド、アイルランドの人々がアパラチア地方(ヴァージニア州、ウエストヴァージニア州、ケンタッキー州、テネシー州、ノースキャロライナ州、サウスキャロライナ州にまたがる地域)に多く移り住み、そこで初めて、スコッチ・アイリッシュ音楽がアメリカに入ってきました。スコッチ・アイリッシュ音楽をはじめとする移民の音楽に、奴隷としてアフリカから連れて来られた黒人達の音楽が少しずつ混ざり合い、「マウンテン・ミュージック(オールドタイム・ミュージック)」を形作っていきました。ちなみにマウンテン・ミュージックのマウンテンでは文字通り「山」のことで、その当時アパラチアの山岳地帯で発生した新しい音楽を、「山岳地帯」に掛けてそのように呼んでいたようです。

アパラチア山脈

マウンテン・ミュージック(オールドタイム・ミュージック)の時代
1920~30年代になると、アメリカ全土でレコードやラジオが普及していきます。テネシー州ナッシュビルのラジオ局が放送していた「グランド・オール・オープリー」という番組は特に有名で、そこで流される音楽に人気が集まっていきました。次第に全国的な知名度、人気を獲得するスター歌手が出現し、マウンテン・ミュージックを演奏するアパラチア地方からもプロ・ミュージシャンが続々と誕生していきました。中でもジミー・ロジャース、カーター・ファミリー、ノースキャロライナ・ランブラーズなどが有名で、精力的に活動していたようです。1940年代になると、マウンテン・ミュージックは少しずつ形を変え、現在に繋がるカントリー・ミュージックへと進化していきます。その流れの中で、ブルーグラスの前進音楽と表現出来るような新しい音楽性をもったバンド、モンロー・ブラザーズが登場してきました。モンロー・ブラザーズで、兄チャーリー・モンロー(ギター)らと一緒に演奏していたのが、後に「ブルーグラスの父」と呼ばれる弟ビル・モンロー(マンドリン)です。やがて兄と別れたビル・モンローは、1939年に「BILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYS」を結成します。

ジミー・ロジャース

カーター・ファミリー

モンロー・ブラザーズ
NewRiverTrain

ジミーロジャース
MuleSkinnerBlues

カーターファミリー
WildwoodFlower

ブルーグラス・ミュージックの誕生
1945年、マウンテン・ミュージックの流れを汲んだ単なるストリング・バンドの一つであったBILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYSに転機が訪ます。その年の12月、ノースカロライナの天才的なバンジョー弾きアール・スクラッグスがバンドに加入したのです。そして、翌年の1946年9月16日、ビル・モンロー(マンドリン)、レスター・フラット(ギター)、アール・スクラッグス(バンジョー)、チャビー・ワイズ(フィドル)、ハワード・ワッツ(ベース)で、ブルーグラス・ミュージック最初の録音が行われることとなり、これがブルーグラスの始まりとも言われています。彼らのタイミングやビートを重視した演奏スタイルは、これまでのどのストリング・バンドとも全く違った斬新なサウンドでした。とりわけ、スクラッグスによる独特の3本指でのピッキング・スタイルは革新的で、すぐさまマウンテン・ミュージックの聴衆の間でセンセーションを巻き起こし、バンドの人気は決定的なものとなりました。その後、BILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYSを模範するバンドが相次ぎ、彼らの様なスタイルのバンド音楽をBILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYSにちなんで「BLUEGRASS スタイルの音楽、BLUEGRASS」と呼ぶようになりました。この時から、この新しい音楽スタイルを作り上げたビル・モンローは、一つの音楽形態の創設者として、「ブルーグラスの父」と呼ばれるようになりました。

ビル・モンロー

ビルモンロー
BlueMoonOfKentucky

BluegrassBreakdown

ビル・モンローを聴こう!
ブルーグラス誕生までの歴史を見てきましたが、いかにBILL ブルーグラスという音楽を語る上で、その創始者であるビル・モンローと、彼のバンド「BILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYS」の存在は欠かせません。もちろん素晴らしいバンドは他にもたくさんいるのですが、これからブルーグラスを始めてみようというビギナーは、まずBILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYSの曲を聴いてみることをオススメします。ブルーグラスのイメージを決定付けた数々の名演または、名曲があり、聴くだけでも勉強になるでしょう。彼らの曲は、ほぼ全てがブルーグラス・スタンダードとして扱われ、今でもセッションなどで頻繁に演奏されています。中でもビル・モンロー作曲の、「Toy Heart」、「Molly and Tenbrooks」、「My Rose of Old Kentucy」、「Little Cabin Home on the Hill」、「Blue Moon of Kentucky」、「Footprints in the Snow」などは特に有名です。最近は、過去の音源のリマスター盤や、ベスト盤などが様々なレーベルから発売されているので、音源が手に入り易くなっています。是非チェックしてみてください。

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