スチールギター レビュー Fender Stringmaster

「Fender」の8弦スチールギターについて、独断と偏見を交えてレビューをしたいと思います。あくまで個人的な見解も多く含まれていますので、参考までにとどめておくようにして下さい。

Fenderのスチールギターの最高峰、StudioDeluxの8弦ダブルネックです。基本的な仕様はシングルネックと同じですので、あえてダブルネックを取り上げてみました。一言でいうと、非の打ち所の無いくらい、文句なしの良いスチールギターです。では細かく見ていきましょう。

楽器の音と言うのは、色々な要素が絡み合って作られています。スチールギターの音に影響する要素、それぞれの点について見てみます。

その1「ボディーの材質と形状、重量」

スチールギターは主に木で出来ています。というより、ギターは殆ど木で出来ています。従って、木の材質と形状が楽器の音に及ぼす影響は大きいです。ギターの弦振動はピックアップによって電気信号に変えられますが、弦振動そのものが、ボディーの木に共鳴していますので、ボディーの存在はとても重要です。ダブルネックのギターは、シングルネックに比べて木の総容量が多いです。それによって、ボディーの響きがしっかり鳴るので、音も良くなると思われます。Fender製というところからも、ボディー材はアルダーかと思われます。ダブルネックの大きさにもかかわらず、異様に軽いのも特徴ですが、これは、材質と年代等による個体差もあるので、全ての固体にいえる事ではないでしょう。ボディーの厚みは手前のネックが4.5cm、奥のネックが5.5cmです。国産のスチールギターの厚みが約4.5cmと、これと同じなのは、Fenderをコピーしたものから由来していると思われます。奥行きは1つのネック辺り11.5cmです。2連になっていますので、23cmあるということになります。これは、12フレットの長さを測っての数値です。

▲ボディの厚みは4.5cm。テレキャスト同じジャックですね。

足を付けないChamp等のシリーズは、もう少しボディの厚みが薄いです。この要素はやはり音にも現れていますね。コンソールタイプのStudioシリーズの方が、より豊かな倍音を感じることができます。

その2「ピックアップとそれに関わる電気系統」

ピックアップはごく普通のシングル・ピックアップが2つ搭載されてます。フェンダーらしく、煌びやかで伸びのある高音が特徴です。パワー感が強いわけではないが、音が抜けるので、存在感があり、バンドの中に入っても埋もれることなく輪郭がハッキリしている音がします。スチールギターの音とはこれ!といったイメージ通りの音がします。

▲各ネックに2つずつピックアップが付いています。

ピックアップは2つが平行に付けられており、角度は付いていないです。両サイドのネジで高さを調整できるのは、通常のストラトと同じ仕様。2つのピックアップは、ブリッジカバーの下に付けられたポットで、バランスを調整することができます。センター・クリックも付いているので、ネックポジション単独の使用~50%~ブリッジポジション単独の使用まで、自由に調整できます。このバランス調整ができる構造は、音作りの幅が広がりとても良いです。

▲ブリッジカバーの下に取り付けられたバランサー

コントロール部分は、各ネックに共通したボリューム、トーンが付いています。ネックごとのボリューム調整などはできませんが、それによって困ったことはないのでシンプルなセットアップで良いかと思います。下の写真右側にあるスイッチは3点の切り替えスイッチになっています。これは、どちらのネックを使うかを選ぶことができます。写真のようにセンターポジションにしておくと、2つのネックの音が同時に鳴りますが、パッシブ回路なので、各ネックの出力は落ちます。ライブ時に両方を行き来するようなプレイではセンターに、単独のネックを使うときはどちらかを選択しておくといいでしょう。

▲コントロール部分。これもテレキャスト同じパーツですね。

その3「 ナット、ブリッジの素材および形状 」

ナット、ブリッジは金属パーツが付けられています。ナットやブリッジは弦に直接触れる部分ですので、当然のように音に大きく影響します。これらの部品もしっかりしているので、特に取り上げる必要もないくらい最高の品質です。ナットからブリッジまでの長さは約62.5cmです。充分なサイズが設けられており、弦のテンション、フレットの間隔共に申し分ないです。

2つのネックはこのように段差が設けられています。個別のシングルネックが並べられたような作りになっていますので、両方の音は同じように思われますが、手前に比べ、奥の方がボディーの厚みがあるので、若干音が違います。奥の方が幾分ふくよかな中域が鳴ります。手前をC6チューニング、奥をB11チューニングにする事が多いですが、人によってチューニングは様々な所がありますので、好みによって使い分けると良いでしょう。

中古でもかなりの値段がしますので、初心者がいきなり購入するにはハードルが高い一品です。しかし、一回弾くと虜になるくらい良い音がします。ある程度弾けるようになったら、検討してみてはいかがでしょう。