スチールギター レビュー Artisan EA-3

新品で安価に購入できるスチールギターとして広く出回っている機種です。独断と偏見を交えてレビューしたいと思います。あくまで個人的な見解も多く含まれていますので、参考までにとどめておくようにして下さい。

作りの具合を見る限り、かなりコストダウンを優先して作られていることが解ります。楽器としてというより、安価な一品をお届け、といった感じでしょうか。

楽器の音は、色々な要素が絡み合って作られています。スチールギターの音に影響する要素、それぞれの点について見てみます。

その1「ボディーの材質と形状」

スチールギターは主に木で出来ています。というより、ギターは殆ど木で出来ています。従って、木の材質と形状が楽器の音に及ぼす影響は大きいです。ギターの弦振動はピックアップによって電気信号に変えられますが、弦振動そのものが、ボディーの木に共鳴していますので、ボディーの存在はとても重要です。のボディー素材は何だかハッキリ解りません。驚くほど軽いです。形状としては、できるだけ余分な素材を使わないで、最小限の大きさにまとめられるようにできているようです。ボディの厚みは3.5cmとかなり薄めです。国産の安価なものでも4cmはあるので、かなり薄いことがわかります。

▲ボディの厚みは3.5cmとかなり薄めです。

奥行きは12フレット辺りで13cmですが、ヘッドに向けて斜めに削りだされているので、ナット付近では8cmまで細くなります。かなり小さいですね。

▲ナットに向けて細く斜めになるようなボディシェイプです

Artisanのスチールギターは足を取り付けられるタイプと、付けられないタイプがあります。写真のこのタイプは3本の足を取り付ける事ができます。足は専用のモノを使い、ネジの小ささから、他のメーカーの足を利用することはできません。あまり安定感がなく、取り外しを繰り返しているとネジ周りが駄目になりそうなので、このように専用スタンドを使っています。

▲3本の足がつけられるようになっています

その2「ピックアップとそれに関わる電気系統」

ピックアップはごく普通のシングル・ピックアップが付けられています。1弦側がブリッジに寄るように斜めに取り付けられています。両サイドのネジで高さの調整ができますが、ピックアップカバーの強度が無いので、扱いには注意が必要です。

▲シングルピックアップが斜めに取り付けられています

1ピックアップなので、セレクタースイッチの類は無いです。1ボリューム、1トーンというシンプルなコントロールです。トーン・コントロールは、これもごく一般的なコンデンサーを使ったハイ・パスです。

▲1ボリューム、1トーンのシンプルコントロールです

ピックアップはパワー感は無くシンプルなサウンドです。シングルとはいえ出力が小さい上、ノイズが常にのっているので、アンプ側で音量を稼ぐにも限界があります。ある程度アンプ側で音量を上げるとハウるので、バンド内での演奏やライブでの演奏には向いてないです。中低音はあまりなく、響きと捉えてない感じがありますが、これは、楽器全体の要素も大きいと思われるので、ピックアップだけの問題では無さそうです。ボリューム・ポッドやジャックといった各部品も、ごく一般的なパーツを使っており、ガリ、断線といったトラブルも起きていますが、これらは、現在も同じ規格で作られているので、リプレイスが簡単に出来ます。が、ピックアップを含めた電気周りのパーツを交換していくと、本体価格を超えますのであまり現実味のある話ではないですね。

その3「 ナット、ブリッジの素材および形状 」

ブリッジは通常のギターと同じパーツが付けられています。スチールギター用のブリッジではなく、ギターパーツを流用しているだけです。従って各弦の弦高調整、オクターブ調整はユーザーに委ねられておりますので、購入後にしっかり調整しなければなりません。また、ブリッジ・エンドから弦を通すタイプのブリッジであり、裏通しするタイプではないです。この辺りからも音に影響がでています。

▲普通のエレキギターと同じブリッジです
▲弦はブリッジエンドから通します

ナットの素材はハッキリしませんが、合成プラスチック的な素材感です。ナット幅は約9mmと普通ですが、ブリッジの弦間は約10mmと、弦が平行にはられていないことが解ります。スチールギターというより、通常のエレキギターのようですね。演奏面にも若干影響が出そうですが、ある程度慣れると気にならなくはなります。

▲ナットはネジでボディーに固定されています

ナットからブリッジまでの長さは53cmと、とても短いです。コンパクトな設計といえばそうですが、弦のテンションは緩く、バーの重みに耐えられず沈んでしまいそうです。サスティンも稼げないので、通常の6弦のセットよりもゲージの太い弦を使うと良いかもしれません。が、やはりそれにはコストがかかるので、難しいところです。

ヘッド部分は削りだしになっています。3連のペグはあまりしっかりしたものではなく、安定感はないですがとにかく軽いです。

新品で2万円ちょっとで購入できるのはいいですね。ただ、楽器としての使い心地は決して良いとは言えないです。旅先でもスチールギターに触れていたいとか、何らかのパフォーマンスで使う等、特殊な用途で使用するのは良いかもしれません。特に初心者の方は、楽器の性能が良くないと、体に余計な力が入ってしまい、練習の方向が間違ってしまいますので、もう少し良い楽器を使用することをお奨めします。